ではどのくらい疑わしいのか?
もしT/E比の検査が感度、特異度ともにそこそこ高い検査だったとしよう。
仮にどちらも90%だったとする。
検査としては使いものになるレベルだ。
そのとき検査で陽性と出たとき、
真の陽性(外因性テストステロンを摂取している)である確率は?
実はこれは感度、特異度だけでは答えが出ない。
母集団中の外因性テストステロンを摂取している割合によって異なる。
仮に摂取しているを「+」、していないを「−」とする。
母集団を1000人として、
+が10%の場合は
陽性 | 陰性 | |
---|---|---|
+ | 90人 | 10人 |
− | 90人 | 810人 |
真の陽性である確率は、90/90+90=50%。
+が1%の場合は
陽性 | 陰性 | |
---|---|---|
+ | 9人 | 1人 |
− | 99人 | 891人 |
真の陽性である確率は、9/9+99=約8.3%
とこんなものである。
意外に小さい、と思う人が多いのではないだろうか。
ランディスの場合、母集団を何に取るかで違ってくる。
プロツールの選手全体だろうか。
それでもメディアから印象づけられるよりも確率は小さいだろう。
そして断定するためには、いずれにせよこうした検査だけでは無理があると思う。
それとは独立した証拠が必要ではないだろうか。
「疑わしきは罰する」ことはサイクルロードレースのクリーンなイメージには意味があるかもしれない。
しかし、ドーピングの烙印を押された選手の支払う代償はあまりいも大きい。