職業病

今日は夜に指導医の往診のお伴をした。
高齢の人で、原因不明の幻覚妄想があって、ケアを拒否する傾向のある人、
ということだった。
なぜか元気が出た。車を降りて家まで歩くとき、ほとんどスキップ状態。
往診は大好きだがそれだけではない。


精神科医として仕事をしていたとき、一番元気が出たのは、
急性精神病状態の人の診察をするときだった。
ここが自分の舞台、という感じがするのだ。
実際、それまで昼行灯の状態でも、シャキッとする。
そういう人とラポールを取る、ということに僕は喜びを感じるのだ。
ほんのかすかであっても、何らかのつながりを感じ取ることができたとき、
あるいは少なくともその場・空間を共有できている、という感触を得られたとき、
そのときの喜びは何ものにも代え難い。
そしてそれが相手にとって回復の第一歩になる、と思っている。
僕に起こっていることと相手に起こっているかもしれないことは、
表裏一体のような気がする。


今日の人は、実際はそれほど拒否的ではなかった、というか、
拒否的でなくなっていた。
指導医が診るようになってそれほど間がないのだが、
たぶん彼の力量のせいだろう。


もちろんだからと言って拍子抜けとかはしない。
その人がよい方向に変わったのはふつうにうれしい。
ただ、スキップせんばかりだった自分はやっぱり変だと思う。
一種の職業病かもしれない。