Advance Directiveをめぐって
代理人による決定であれ、本人によるadvance directiveであれ、
終末期(end of life)での本人の意思とずれが生じうる、という結論。
これに絡めて最近考えていることを少し。
advance directiveについて論じるには、たとえば次のようなことを考えておく必要があると僕は思う。
- 「終末期」の多様さ
癌、COPD、認知症と疾患が異なるだけで、終末期は大きく異なる。
(一人一人異なる、と言いたいが、それでは話が終わってしまいそうなので、
あえて疾患レベルで考えたい*1)
たとえば癌は終末期(およそ最後の1ヶ月ぐらい?)まではQOLが大きく下がることはない。
COPDは増悪と寛解を繰り返しながら徐々にQOLが下がる。
そして認知症は終末期に至る前に意思表示が困難になる、など。
仮にadvance directiveに意義があるとしても、それぞれで事情はかなり異なるだろう。
- 精神疾患との関係
一部の精神疾患は急性期に意思表示が困難になる。
そのため、海外では治療(強制を伴う)を受けるか否か、受けるとしてどのような治療を受けるか、
というadvance directive(psychiatric willなどと言われる)が論じられ、一部で実行されている。
これは終末期のadvance directiveと同じところ、異なるところがある。
異なるのは、すでに急性期エピソードと治療を経験した人が、
再発時のadvance directiveを行う、という点だ。
だから上記論文で見られたずれはない訳ではないにせよ、たぶん小さい。
もう一点。
認知症の人のadvance directiveの有効性を疑問視する議論に、
人格の同一性・連続性が保たれないことを理由に挙げるものがある。
しかしこれは同様の理由で精神疾患でのadvance directiveを無効にしてしまう可能性がある。
いずれにせよ、認知症の終末期については、精神疾患を視野に入れつつ論じる必要があると思う。
*1:と言っても誤解しないでほしいが、「終末期」を純粋な医学的概念だなどと考えているわけではない。これについてはまた改めて。