Advance Directiveをめぐって

Arch Intern Med -- Abstract: The Accuracy of Surrogate Decision Makers: A Systematic Review, March 13, 2006, Shalowitz et al. 166 (5): 493

Arch Intern Med -- Abstract: Prospective Study of Health Status Preferences and Changes in Preferences Over Time in Older Adults, April 24, 2006, Fried et al. 166 (8): 890

代理人による決定であれ、本人によるadvance directiveであれ、
終末期(end of life)での本人の意思とずれが生じうる、という結論。


これに絡めて最近考えていることを少し。


advance directiveについて論じるには、たとえば次のようなことを考えておく必要があると僕は思う。

  • 「終末期」の多様さ

癌、COPD認知症と疾患が異なるだけで、終末期は大きく異なる。
(一人一人異なる、と言いたいが、それでは話が終わってしまいそうなので、
あえて疾患レベルで考えたい*1
たとえば癌は終末期(およそ最後の1ヶ月ぐらい?)まではQOLが大きく下がることはない。
COPDは増悪と寛解を繰り返しながら徐々にQOLが下がる。
そして認知症は終末期に至る前に意思表示が困難になる、など。
仮にadvance directiveに意義があるとしても、それぞれで事情はかなり異なるだろう。

一部の精神疾患は急性期に意思表示が困難になる。
そのため、海外では治療(強制を伴う)を受けるか否か、受けるとしてどのような治療を受けるか、
というadvance directive(psychiatric willなどと言われる)が論じられ、一部で実行されている。
これは終末期のadvance directiveと同じところ、異なるところがある。
異なるのは、すでに急性期エピソードと治療を経験した人が、
再発時のadvance directiveを行う、という点だ。
だから上記論文で見られたずれはない訳ではないにせよ、たぶん小さい。
もう一点。
認知症の人のadvance directiveの有効性を疑問視する議論に、
人格の同一性・連続性が保たれないことを理由に挙げるものがある。
しかしこれは同様の理由で精神疾患でのadvance directiveを無効にしてしまう可能性がある。

いずれにせよ、認知症の終末期については、精神疾患を視野に入れつつ論じる必要があると思う。

*1:と言っても誤解しないでほしいが、「終末期」を純粋な医学的概念だなどと考えているわけではない。これについてはまた改めて。